相続放棄とは?効果や手順、期限を解説

  • 親から借金を引き継いでしまった
  • 管理が面倒なので、田舎の実家を相続したくない
  • 相続争いに関わりたくない

そんなときには「相続放棄」が役立ちます。

今回は相続放棄とは何か、基本的な効果や手順、期限を解説していきます。親や兄弟の遺産を相続したくない方は、ぜひ参考にしてみてください。

1.相続放棄とは

相続放棄とは、法定相続人がその地位を放棄し、資産も負債も一切承継しないことです。
子どもや配偶者などの法定相続人は、残された遺産を法定相続分に従って相続するのが原則です。他に共同相続人がいたら、遺産分割協議を行って遺産分けをしなければなりませんし、借金などの負債が遺されていたら法定相続分に応じて支払わねばなりません。

遺産トラブルに巻き込まれたくない場合や借金を相続したくない場合、相続放棄すると「相続人ではなかったこと」になり、目的を達成できます。

相続放棄すると、もともと法定相続人だった人は資産も負債も一切承継しません。遺産分割協議を行う必要もなくなりますし、遺言書を探したり相続税を払ったりする義務も課されません。もちろん借金や滞納税などの負債を払う必要もありません。

相続放棄は急増している

相続放棄の件数は、ここ30年間で急増しています。1985年には約4.6万件であったところ、2015年には約19万件になっており、約4倍の伸びを見せています。

もともとは「借金を相続したくない」という動機で相続放棄する方が多かったのですが、最近では「田舎の実家を相続したくない」「遺産の管理が面倒」などの理由で相続放棄を選択する方も多くなっています。

2.相続放棄のメリット

相続放棄すると、以下のメリットがあります。

2-1.負債を承継しなくて済む

相続放棄すると、その人は相続人ではなくなるのでいっさいの負債を承継しません。被相続人がどれだけ高額な借金、未払い税、未払家賃、損害賠償金などの負債を負っていても、相続人が支払う必要がなくなります。
いったん相続してしまったら自分の負債として弁済が必要となり、支払えなければ自己破産しなければならないケースもあります。負債を免れることは多大なメリットとなるでしょう。

2-2.遺産トラブルに巻き込まれなくて済む

相続放棄すると、その人は相続人ではなくなるので他の相続人との間で遺産分割しなくて良くなります。
いったん遺産分割協議や調停でもめごとになると、相続開始後3年、5年が経過しても解決できないケースが少なくありません。解決後も人間関係が完全に断絶してしまうでしょう。相続放棄したらそういった無益な争いに巻き込まれないメリットがあります。

2-3.面倒な相続手続きをしなくて良い

相続手続きは、非常に面倒で手間と時間がかかります。

  • 遺言書を探す
  • 遺言書が見つかったら家庭裁判所で「検認」を受ける
  • 相続人や相続財産調査を行う
  • 遺産分割協議書を作成する
  • 不動産の名義変更をする
  • 相続税の申告納税を行う

相続税納税義務が発生すると後日税務調査が入る可能性もありますし、費用がかかる手続きも少なくありません。
相続放棄したら、上記のような手続きはすべて不要となり、大きく手間や時間を省けるでしょう。

2-4.不要な財産を承継しなくて良い

田舎にある価値の低い不動産を相続すると、管理しなければならない上に毎年固定資産税を払わねばならず、大変な負担となります。
相続放棄すると、不要な財産を承継しなくて良くなるメリットもあります。

3.相続放棄のデメリット

相続放棄には以下のようなデメリットもあるので、注意してください。

3-1.資産も承継できなくなる

相続放棄すると、負債だけではなく資産も一切承継できません。価値の高い不動産、預貯金や株式などの重要資産についても権利主張できなくなります。資産超過のケースで相続放棄すると、損をしてしまう可能性が高まります。

3-2.遺産の管理義務が残る可能性がある

相続放棄者には、基本的に遺産の管理義務はありません。ただし相続人が全員相続放棄した場合、管理義務が残るので要注意です。
たとえば親が亡くなったときに子どもが全員相続放棄したら、子ども達は実家を管理し続けなければならないのです。管理義務を免れるには、家庭裁判所で「相続財産管理人」を選任しなければなりません。そのためには多大な労力と費用がかかる可能性があります。
全員で相続放棄する際には、管理が必要な資産がないかどうか確認してからにしましょう。

4.相続放棄をお勧めするケース

以下のような場合には、相続放棄が有効な対処方法となります。

  • 債務超過で借金や未払い家賃などの負債を受け継ぎたくない
  • 被相続人と生前疎遠にしており、遺産を相続したくない
  • 遺産が少額で、他の相続人と話し合ったり手続きしたりするのは面倒、関わりたくない
  • 事業承継などの事案で特定の相続人に資産と負債を集中させたい

5.相続放棄の手順

相続放棄するときには、以下の手順で進めましょう。

5-1.家庭裁判所で「申述」を行う

相続放棄の効果を発生させるには、家庭裁判所で「申述」という手続きが必要です。申述とは「申し述べる」ことを意味します。すなわち家庭裁判所で正式に「申述」をして裁判所で受理されないと、相続放棄したことになりません。
ときどき、他の相続人へ「相続放棄します」などと一筆書いた書面を差し入れて「相続放棄できた」と思い込んでいる方がいますが、それではまったく意味がありません。
必ず家庭裁判所で手続きを行いましょう。

5-2.管轄の家庭裁判所

相続放棄の申述を行う家庭裁判所には、専門の「管轄」があります。「被相続人(亡くなった方)の最終住所地の家庭裁判所」で手続きを行いましょう。

5-3.必要書類、費用

相続放棄するときには、以下の書類が必要です。

  • 相続放棄の申述書
  • 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本、除籍謄本
  • 相続放棄する人の戸籍謄本

申述人が孫、親や兄弟姉妹などの場合、別途戸籍謄本類が必要となります。

かかる費用は以下のとおりです。

  • 収入印紙 800円分
  • 郵便切手(1000円分程度。家庭裁判所によって具体的な金額や内訳が異なります)

申述書や必要書類の提出は、持参でも郵送でも可能です。

5-4.申述書提出後の流れ

相続放棄の申述書を提出すると、以下のような流れで手続きが進みます。

(1) 相続放棄の照会書、回答書が届く

まずは家庭裁判所から「相続放棄の照会書」が「回答書」とセットで届きます。ここには、生前の被相続人との関係や把握している資産内容、相続開始を知った時期などの質問事項が書かれているので、同封されている回答書に答えを記入しましょう。
回答書に記載した内容次第で相続放棄の申述が受理されなくなる可能性もあるので、慎重に対応する必要があります。

(2) 回答書を返送する

回答書が完成したら、家庭裁判所へ返送しましょう。

(3)相続放棄の受理通知書が届く

問題がなければ、家庭裁判所から相続放棄の受理通知書が届き、正式に相続放棄できたことになります。

相続放棄した事実の証明書がほしい場合、家庭裁判所へ「受理証明書」を申請しましょう。
債権者から債務の督促などを受けたとき、受理証明書を示せば法的に支払い義務がないことを証明できるので、それ以上追及されずに済みます。

6.相続放棄の期限

相続放棄は、「自分のために相続があったことを知ってから3か月以内」にしなければなりません。通常は「相続開始を知ったときから3か月」を期限とします。つまり被相続人が亡くなったと知ったら、そのときから3か月以内に相続放棄の申述をしないと相続放棄できなくなってしまうのです。この3か月を「熟慮期間」といいます。

被相続人が負債を遺している可能性があるなら、早急に相続財産調査を行って相続放棄するかどうか決めましょう。

なお相続人が海外居住などでどうしても熟慮期間内に相続放棄するかどうか決められない場合、家庭裁判所へ「熟慮期間伸長の申立」をすれば数か月延ばしてもらえる可能性もあります。ただし確実ではないので、できれば熟慮期間内に態度を決める方が安心といえるでしょう。

相続放棄するなら、早めの行動が肝要です。迷っていると熟慮期間が経過して負債を承継せざるを得なくなってしまうでしょう。悩んでおられるなら弁護士がアドバイスやサポートを致しますので、できるだけお早めにご相談ください。

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