勝手に相続手続きをされたらどうなる?遺産分割協議を弁護士に依頼するメリットとは

遺産相続の際、一部の相続人が勝手に相続手続きを行ってしまうケースが少なくありません。自分を除外されて遺産分割協議が行われてしまったり、預金を勝手に引き出されたりしたらどのように対応すれば良いのでしょうか?

今回は勝手に相続手続きをされた場合の対処方法や遺産分割協議を弁護士に依頼するメリットをお伝えします。

他の相続人による勝手な言動にお困りの相続人さまはぜひ参考にしてみてください。

1.相続手続きを勝手に進められる典型例

他の相続人に勝手に相続手続きを進められる典型例として、以下のようなものがよくあります。

1-1.一部の相続人を除外して遺産分割協議を行う

遺産分割協議には、相続人が全員参加しなければなりません。
それにもかかわらず一部の相続人が除外されたまま、残りの相続人だけで勝手に遺産分割協議が進められるケースです。

1-2.預貯金が勝手に出金される、利用される

遺産の中に預貯金がある場合、一部の相続人が勝手に預貯金を引き出して使ってしまうパターンもよくあります。

1-3.株式が勝手に売却される

被相続人が株式などの有価証券を持っていた場合、一部の相続人が勝手に株式を売却して売却金を自分のものにしてしまうケースです。

1-4.不動産の共有登記をされて売却される

遺産の中に不動産が含まれている場合、一部の相続人が「共有登記」をした上で売却してしまう可能性があります。共有登記とは、法定相続人全員の名義にする相続登記です。不動産の相続が起こったらいつでも法定相続にもとづく共有登記できる状態になります。

本当は遺産分割協議で自分が単独で不動産を取得することが決まったのに、登記が遅れると共有登記をされて勝手に不動産を売却されるリスクが生じます。

以下では勝手に相続手続きをされたときの対処方法をパターン別にみていきましょう。

2.遺産分割協議で一部の相続人が除外された場合

まずは一部の相続人が除外されたまま遺産分割協議が行われた場合の対処方法を解説します。

遺産分割協議には、相続人が全員参加しなければなりません。
一部の相続人が除外されたり、権利のない人が勝手に参加していたりしたら遺産分割協議が無効となります。

その場合、遺産分割協議書がどのような形で作成されているかによって対応が異なってきます。

2-1.一部の相続人が遺産分割協議書に署名押印していないケース

一部の相続人が遺産分割協議に参加していない場合、遺産分割協議書へ署名押印ができません。
ただ相続人による署名押印が欠けている遺産分割協議書では相続手続きができません。
相手が持っている遺産分割協議書は法的に意味のない書類といえます。遺産分割協議はやり直す必要があります。

相手方に対してあらためて遺産分割協議を行うよう求め、すべての相続人をまじえて話し合いをやり直しましょう。

2-2,署名押印が偽造されているケース

2つめのパターンは、遺産分割協議書において署名押印が偽造されているケースです。
自分は署名押印していないのに、誰かが勝手に署名押印欄に記名捺印しており、見かけ上は遺産分割協議書ができあがっています。

この場合、本来なら遺産分割協議は無効ですが、提示された金融機関などが「偽造である」事実を見抜けず受け付けられてしまう可能性が高いでしょう。預貯金の払い戻しや株式の売却などが受け付けられてしまう可能性もあります。

遺産分割協議のやり直しを求める

偽造の遺産分割協議書が作成されたケースでも、基本的には遺産分割協議のやり直しを求めるのが基本です。相手が納得すれば、新たに話し合いをして遺産分割の方法を定められます。納得した条件で遺産分割協議書に署名押印し、相続手続きを進めましょう。

遺産分割協議の無効確認訴訟を起こす

相手が遺産分割協議のやり直しに応じない場合には、遺産分割協議が無効であることを裁判で明らかにしなければなりません。この裁判を「遺産分割協議の無効確認訴訟」といいます。遺産分割協議がもめたときの「遺産分割審判」とは異なるので、間違えないように注意しましょう。

遺産分割の無効確認訴訟を有利に進めるには法的な知識とスキルが必要です。素人の方がお一人で対応すると、極めて不利になってしまうリスクも高くなるので、お早めに弁護士までご相談ください。

3.預貯金を勝手に引き出された場合

他の相続人が勝手に預貯金を引き出して使ってしまった場合、以下の2種類の対処方法があります。

3-1.遺産分割協議で解決する

預貯金の処分時期が相続発生後に限られていたら、遺産分割協議で解決できます。
使い込んだ相続人の取得分を減らし、他の相続人の取得分を増やせば公平に遺産分割できるでしょう。
話し合いでは合意できない場合、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立ててください。
調停でも解決できない場合には審判になって審判官が適切な遺産分割方法を指定してくれます。

なお使い込み時期の全部や一部が相続発生前の場合には遺産分割協議で解決できません。
次の不当利得返還請求を行う必要があります。

3-2.不当利得返還請求や不法行為にもとづく損害賠償請求を行う

2つめの方法は、不当利得返還請求や不法行為にもとづく損害賠償請求です。これらの手続きであれば、預貯金使い込みの時期にかかわらずできます。

具体的な手順として、まずは相手に対し裁判外で預貯金の開示を求め使い込み分の返還を要求しましょう。
話し合いでは解決できない場合、地方裁判所で不当利得返還請求訴訟や不法行為にもとづく損害賠償請求訴訟を起こさねばなりません。

訴訟になったら早めに弁護士へ相談しましょう。

4.株式を勝手に処分された場合

株式を勝手に処分された場合にも、対処方法は預貯金のケースと同様です。
使い込み時期が相続開始後なら遺産分割協議で解決できますが、相続開始前の場合には不当利得返還請求や不法行為にもとづく損害賠償請求をしなければなりません。

5.不動産を勝手に処分された場合

不動産を勝手に処分された場合にも基本的には預貯金のケースと同様に解決できます。
ただし不動産の場合には、所有権移転登記が行われているケースも多いでしょう。その場合、登記名義を回復する手続きもしなければなりません、。

また第三者への登記が先に行われていれば、基本的に第三者が優先されます。

このように、相続登記が遅れると訴訟を起こしても相続人が相続した資産を取得できないリスクが発生します。不動産を相続する場合には、早めに相続登記を行うことが権利を守るために重要です。

6.勝手に相続手続きをされたときに注意したい時効の問題

勝手に一部の相続人によって相続手続きをされたとき、注意したいのが「時効」の問題です。
長年放置していると、権利を守れなくなってしまうおそれがあります。
それぞれの手続きにどういった時効が適用されるのか、みてみましょう。

6-1.遺産分割協議には時効がない

遺産分割協議には時効がありません。無効な遺産分割協議書ができあがっている場合には、いつでも遺産分割協議のやり直しができます。
ただし相続開始から時間が経つと、遺産が散逸して遺産分割協議をやり直すのも難しくなってしまうリスクがあります。

遺産分割のやり直しを希望するなら、早めに相手に通知して行動を起こしましょう。

6-2.不当利得請求や不法行為にもとづく損害賠償請求には時効がある

預貯金や株式が使い込まれた場合の不当利得返還請求や不法行為にもとづく損害賠償請求には時効があります。
不当利得返還請求の場合、以下の早い方の時点で時効が成立してしまいます。

  • 請求できることを知ってから5年
  • 請求できるときから10年

また不法行為にもとづく損害賠償請求の場合には「損害と加害者を知ってから3年」が経過すると時効にかかります。

いずれにせよ、放置していると取り戻しが難しくなってしまうので、不正が明らかになったら早めに相手に対し、取り戻しを請求しましょう。

7.遺産相続を弁護士に依頼するメリット

遺産相続手続きを弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。

7-1.スムーズに手続きを進められる

遺産相続では、相続人はさまざまな手続きに対応しなければなりません。期限のある手続きも多く、急ぐ必要もあります。
弁護士に任せると、弁護士が率先して手続きを行えるのでスムーズに進められます。

7-2.労力がかからない

自分で相続手続きを行うと、大変な手間が発生します。
相続人調査や遺産の調査、遺産分割協議書の作成などの基本的な事項だけではなく、他の相続人が勝手に手続きを進めたら無効確認訴訟や遺産分割調停、審判にも対応しなければなりません。

弁護士に任せると、訴訟や審判も任せられるので、労力がかかりません。

7-3.状況に応じた適切な判断ができる

他の相続人に勝手に相続手続きをされたら、状況に応じて適切な対応をしなければなりません。遺産分割協議で解決できる場合もあれば訴訟が必要になるケースもあり、集めなければならない証拠類も状況によって異なります。
弁護士に相談すると、何をすれば良いのか確認できるので安心して対応を進められます。

7-4.もめてしまっても安心して任せられる

遺産相続では、相続人同士でもめてしまうケースも多々あります。
弁護士に代理人を依頼していれば自分で対応する必要はありませんし、調停や訴訟にも対応できるので安心です。

7-5.有利に解決できる可能性が高くなる

自分で話し合いを進めたり訴訟に対応したりすると、有利に解決できるとは限りません。感情的になってトラブルが大きくなったり、法律の考え方を知らないまま不利な条件を受け入れたりしてしまうケースも多々あります。
弁護士に依頼すると、依頼者が最大限の利益を得られるように専門家として行動するので、有利に解決できる可能性が高まります。

7-6.ストレスがかからない

親族同士の遺産トラブルは非常にストレスのたまるものです。弁護士に任せると弁護士が前面に立って対応してくれるので、自分で相手と交渉する必要がありません。精神的な負担も大きく軽減されるでしょう。

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